伊万里陶苑の生い立ち

History

伊万里陶苑は1968年(昭和43年)に設立し、翌1969年5月より製造販売を開始しました。

当時の陶磁器業界は生産設備の近代化により大量生産化の進行が著しく、手加工技法が軽視され伝統的技能者も次第に減少し、その伝承保存さえも危惧される状況にありました。

従って生産される日用品は俗悪化したため、進歩向上する現代生活に必要な健全な良質品が欠如していました。このような状況を嘆き高品位の製品を生産する工場の設立を提案したのが澤田痴陶人です。

澤田痴陶人の思想に共感した金子定(金子産業株式会社社長)は有志たちの出資協力を得て法人組織により会社「株式会社 伊万里陶苑」を設立しました。

伊万里陶苑の中心的スタッフとして当時長崎県窯業記述センターのデザイン科長であったクラフトデザイナー岡本榮司を取締役工場長として、また同時に愛媛県砥部焼きの工場に勤めていた痴陶人の長男、澤田惇を加えて迎え、痴陶人は顧問指導者となって、生産体制を確立していきました。

このようにして設立した伊万里陶苑は、伝統的な陶芸技術を駆使しながら、向上し変化していく現代の生活環境に調和する新鮮な感覚の製品を多様に開発生産しています。

受け継がれる意志

VISION

伊万里で製陶所を経営していた金子定は、痴陶人の考えに深く同調し、持てる全てを投げ打って現代伊万里焼きの品質の追求と技術の伝承、そして未来に投資しました。そうして生まれた伊万里陶苑は、痴陶人、岡本榮司、澤田惇(痴陶人の長男)を中心としてそれぞれの役割を持って生産体制を確立し、高品質な製品を追及しました。陶土、土作り、生地づくりから釉薬、焼成と全てに特別なこだわりを持ち、さらに全ての工程を伊万里陶苑で行う等、痴陶人が求めた頑ななものづくりへのこだわりは設立当初から現在まで一切変わることなく受け継がれ実践されています。

金子定、痴陶人、岡本榮司が残した伊万里陶苑の礎を引き継いだ現社長の金子秀樹は先代の志を引き継ぎ、現在のショールームを開設。そこで伊万里焼きの未来にかけた職人たちの意志を訪れるお客様に伝えてきました。その中には大英博物館の日本美術部長であったローレンス・スミス氏があり、その偶然もしくは必然の出会いから1997年5月、大英博物館にて日本人陶芸家として初めての個展が4ヶ月間にも渡って開催されたことで痴陶人の名は一躍脚光を浴びることになりました。また、1997年、イギリス大英博物館での痴陶人作品展を記念した展覧会が、東京・新宿の百貨店で開催され、痴陶人に興味を持たれた片岡鶴太郎氏は、痴陶人ゆかりの道具や絵の具を使って作陶してみたいとの話があり、時々伊万里陶苑を訪れ、作品を制作されるようになりました。

痴陶人の陶芸家としての思想は、金子定の意を得て実体化し、その思想を引き継いだ職人たちと現社長金子秀樹により大切に守られ、確かに息づいています。

そして、日本のみならず世界にも製品に賛同していただける方々がいることに感謝し、ただ実直に伝統を守り、より良い製品を生み出すことに努力と工夫を怠らず邁進して参ります。

痴陶人と岡本榮司

Chitojin and Eiji Okamoto

痴陶人

痴陶人(澤田痴陶人)の名前は皆さまにはあまり馴染みがないかと思われます。このほとんど無名の陶磁器デザイナー・絵付師の個展が、1997年5月から4ヶ月間、ロンドンの大英博物館コニカギャラリーで開催され大反響を呼びました。同館で初の日本人陶芸家の個展であり、画期的な出来事となりました。

1993年、伊万里陶苑を訪れた大英博物館の日本美術部長であったローレンス・スミス氏により痴陶人の作品が見出され、個展開催に至りました。

スミス氏は「痴陶人が突出した独自の存在であるのは、彼が何世紀にも及ぶ陶磁器芸術の多彩な伝統を幅広く活用したにとどまらず、図柄の大胆さ、人間味の溢れるユーモア、筆使いに込められた力、スケールの広がり、そしてありのままの個性、これらすべての結合、つまり一体感である」と絶賛し、陶芸の棟方志功と評しています。

痴陶人は生涯の大半を陶磁器製作に職業人として関わりました。京都・佐賀・美濃・伊万里と代表的な窯業地に移り住み、主にデザインの指導にあたりました。それは明治維新以後、歴史を持つ産地が近代化の波に直面し、伝統を活かしながらデザインを革新する方向を模索した流れと重なります。

伊万里で製陶所を経営していた金子定は、質の高い伊万里焼を作りたいという思いで伊万里陶苑を設立しました。その時に招聘した陶工が痴陶人です。

痴陶人は、日本画家から陶工へと転身した人物で、中国の古陶磁を熱心に勉強しました。
痴陶人は、金子定から多くの支援を受けて、多数の作品を制作しました。同時に産業デザイナーとして、伊万里陶苑の職人たちの指導に尽力しました。

岡本榮司

岡本榮司は熊本県三角町に生まれ、東京藝術大学を卒業。その後長崎県窯業指導所(現・長崎県窯業技術センター)のデザイン科長として活躍しました。
岡本榮司のクラフトデザイナーとしてのデザインの秀悦さ、マネージメント力を見込んで、金子定は岡本榮司を伊万里陶苑常務取締役工場長として招聘しました。その後岡本は1975年に同社代表取締役社長、1987年に同社顧問に就任。佐賀県窯業大学校非常勤講師としても技術を後世に伝え、1993年にはその作品が大英博物館に買い上げられました。

その他経歴

  • 日本クラフトデザイン展、長崎県美術展、ながさき陶磁展 審査員、
  • 九州山口陶磁展、全国陶磁器意匠保護協議会 審査委員
  • 佐賀及び長崎県技術アドバイザー
  • ’66年クラフトセンター賞、PAK賞
  • 九州山口陶磁展等入賞
  • ’82年東京国立近代美術館「注ぐ」展招待出品
  • 全国伝統的工芸品産業功労賞
  • 九州通 商産業局長(功労賞)表彰